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zoom RSS 本:「メジャー」を生みだす

<<   作成日時 : 2016/07/19 22:28   >>

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日本の今の社会で流行曲やアニメ作品などを生み出すクリエイターの方に、どんなテーマ、自分が相対している人たちをどう見ているのか、自分の創作の姿勢、などをインタビューした、という本です。「オタク市場は終わった。『普通の人』に本気で売ろう!」というキャッチーな帯文句に「日本人総(何かの)オタク化とまで言われかねない世の中で普通の人って誰やねん」と思いつつ手に取った本です。


いわゆる「オタク向け市場(まぁ、昔のNRIとか矢野経済研あたりが調査しているやつですね。)」向けの製品を作り、「金払いのいい」これらのお客を取り込んでビジネスをすれば上手くいく!的な言説は、実際には死屍累々で、

「売らんかな」だったり「ツボを外している」とか「粗製乱造で丁寧さが足りない」などの「まぁこれくらいやればオタクが買うだろ」が透けた瞬間に商売がコケるのを繰り返しているわけですが、

そんなその分野のオタク以外は知らないような作品や商品が日々作られて、知らない間に売れていたり消えていたりするのとは別に、

「趣味が蛸壺化して日本中の人が知っている作品なんてものがほぼ無くなった世界で、メインターゲットと思われる人以外の人にも自分の作品を届けることに成功した人」というのもいて、その人たちは自分の作品をどんな思いで作ったのかね、と訊いて回った、という試みの成果になります。

インタビュアーには、オタク向けコンテンツというものが、マーケティングに血道をあげ、ある支持層からどかっと集金するような商売を繰り返している限り(今の世界でその代表例っぽいものは、スマホゲームのコンテンツガチャ的なものになるのか?)、やっていることは売れ筋コンテンツの再生産になり、将来は消費層と共に消滅していく(消費層を広げる努力が足りない、もしくは特化しすぎて他の層に受けないので、消費層の新陳代謝が起きない)だけのものになる、という問題意識があるのですが、これって別にオタク向けコンテンツに限らない、前例主義・統計結果に基づく商売をやっている業界どれにも似たような傾向があると思うのだけどね。



実はこの記事、ある伏線を回収するために書こうとして、その部分の筆がなかなか進まなかったのですが・・・

ワシントン・ナショナル・ギャラリー展@三菱一号館美術館(2015/05/26)

「半径5m」をテーマにしていることについては、他の話に繋がっていくのですが、それはまたいずれ。


19世紀末のアメリカで、ナショナルギャラリーの収蔵品の基となるコレクションを作り上げたほどの富豪アンドリュー・W・メロンの長女、エイルサ・メロンが「自らの絵画コレクション」を作るにあたって、テーマとしたのが「半径5mを描いた絵画」だったという。

アメリカの経済界を動かす家の出で、様々なビジネスをバリバリ行う人が、国家発展の昇り基調の社会の中で、自分のバランスを保つために「聖域としての自宅」というのを作っていて、そこを飾るのは「半径5m以内にありそうなもの」を描いた絵たち。

これは、対外的な活動とのバランスで、「帰ってきたときにほっとできるもの」を身の回りに置いてオンとオフを切り替える装置にしていたようなのですが、


実は、この「半径5m」と似て非なる話がこの本に出てきます。それが「半径3メートルの楽園」。



例えば、本書の120ページに「半径三メートルの世界の幸福”だけ”を追いかける傾向(""は引用者が付記)」という言葉が出てきます。

この本に話し手として出てくる方々の中に比較的共通して現れる概念で、

「世界のことなんかわしゃ知らん。この両手の中にあるものだけが全てなんだ。そこさえ安楽なものになればいいんだ。」

という考え方。上に出てくる「外に出て行って何かした後の『帰る場所』としての半径5mのコンファタブルゾーンがある」のではなく、「半径3mだけに居て、その中だけを見て、その外にある世界は無視する(無いかのように振る舞う)」という傾向があるという話。

ネットの炎上騒ぎとか、社会問題への無関心さとか、移り気で忘れられやすい様々な話題とか、見ていれば何となく理解できる話ですが、

そこに対して、社会とか、自分たち以外の人たちがいて、それで世界は回っているということにも関心を持たせようとする(ある意味スパルタ?な)クリエイターと、

その、他の世界なんか知ったこっちゃない、と思う人たちすら逃れられない「自分を見て!」という自己承認欲求へ、外の世界からの他者の手を届かせてあげるために、寄り添い彼らの状況を言語化してあげるクリエイターがいるのかな、という印象。


この日常3メートルの範囲内だけで世界を完結させたい(世界との関わりに煩わせられたくない?)と思っている人たちにどう接するかと、「誰であっても、他の誰かに自分のことを認められたい」のバランスの上に、いろいろと尖った作品作りが行われている、ということなのかな、というのが私の印象。もっとも、紹介されている作品の大半に触れたことがないので、その辺も踏まえないとこの点についてはちゃんとした考えにまとまらなさそうですが。


で、
セカイ系(自分たちの特殊事情が世界に影響を与える「設定」がある世界)とか、
特に努力することなくお膳立てされた環境で活躍できる幸運に恵まれるものとか、

そういった人たちの欲望に沿う作品(初めてそういったジャンルを作った人はともかく、今はもうそのジャンルも「マーケティングに基づく作品」であると思うが)もあるけど、

君たちの見ている世界の外にも「世界」はあるって、ちゃんと突きつけようとする作品も、それなりに地位を築いていたり、ということで面白いのですが、この向き合い方には、その制作人がどの世代に属しているかも影響していそうです。


その話は本にも出てて、

「自分だけの小さな世界に閉じこもっている」と単純に断罪できるかといえば、

「じゃあ、大人の世界はどうなんだ。空虚な言葉しかないじゃないか」という反撃を食らいかねない。


子どもが成長し、ぶつかる壁としての「大人」なるものが存在せず、ゆえにそれを乗り越えたり、壊して前進したりする必要がなく、
下手すると、子どもは「年上の人がやったことの継承者」として育てられ、その安定性(少なくとも行くべき道が決まる)ゆえに子ども側も受け入れる、

ということが比較的当たり前の世の中なのだとすれば、

こんな、
ロックは反体制ではなく、その時代が「ロックを反体制にしただけ」。ロックはかくあるべしという硬直した思考がそもそもロック的ではない(73ページ辺り)や、
若年層が薄くなり、巨大な年長者を抱える社会では「上への反逆」は共感がわかないテーマ。継承をどうするかを上も下も考えている
(175ページ辺り)、
発言とともに、

反体制とか、反抗期とか、むしゃくしゃした破壊衝動とか、奇をてらう何かとかが意味を失い、せいぜい「モラトリアム」だけが残るのも仕方ないのかも。


たまたまこんなツイートもあったが、
90年代から、個人主義全盛を経て社会への帰属意識がなくなっていったのだと思う。少なくとも、自分が中学生だった2000年代前半には、いい大学行って良い企業に入ると言うのは死んだ価値観だった。生きる意義は自分で見出さなければならない。

RT 僕らの世代は、バブル崩壊、阪神大震災、地下鉄サリン事件、金融機関の破綻、就職氷河期、そして911と、社会の「底」が抜けた、と言えるような出来事に囲まれて思春期から青年期を過ごしたわけで、既存の秩序をどこか「かりそめのもの」として見るはじめての世代なんだろうなと思う。

http://twitter.com/thee_shizuoka/status/747792127912861696

引用者注:ここでいう「僕らの世代」とは、今ちょうど40歳くらいの人のこと。コメント者は社会への帰属意識が失われる契機を個人主義に拠っているが、私自身は、90年台中期の大規模リストラの嵐と個人責任論を隠れ蓑にした社会による救済の放棄のインパクトに伴う忠誠心の消滅が原因ではないかと考える。


本当は、その「既存の秩序」なるものですら、せいぜい冷戦体制・55年体制・第二次大戦後工業社会の中の秩序で、昔からある「既存」のものではないはずなのだけど、

とにかく「前の世代にはそれぞれの世代における秩序があり、その秩序とのぶつかり合いから新秩序が生まれる」として世代を経てきた世界が、

「そもそもどこにも共通認識や基盤とか秩序なんかなくて、個々の選択した小さな世界の中で皆がばらばらに(取引しつつ)生活している中に、次の世代もどうにかして自分なりの小さな世界を作って割り込んでいく」世界になった結果、


「世界を泳いだ後に戻ってくるコンファタブルゾーン」と「世界は背景であり、自分の手の届く範囲だけがリアル」という「半径数メートル」に対する認識の違いが生じているんですかね。


この調子で世界がクラスタに細分化されつくしたら、複数のクラスタの支持があることが「メジャー」になるのでしょうか。「トレンド」って何をみて言う言葉になるんだろう。何か大きく世界を塗り替える価値がいつかどこかに生まれるのではなく、棲み分ける世界になったりするのかな。





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