いーわん情報源 たまには日記

アクセスカウンタ

zoom RSS 本「日露戦争、資金調達の戦い: 高橋是清と欧米バンカーたち」

<<   作成日時 : 2012/08/06 11:16   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0

前回に続き明治ネタ。春くらいに何人かの人が「この本は面白い!」と言っていたので気になっていたものをようやく読了しました。何せ、450ページの分厚い本なので、持って歩くのに躊躇するというか・・・でも読みやすい本です。

私にとって明治は曾祖父の時代。軍人だった曾祖父が日露戦争に出征して、鴨緑江渡河作戦から奉天会戦まで参加していたので、それなりに年表的な経緯はわかっているのですが、よく分からないのが、

陸軍が12億8300万円、海軍が2億2500万円使ったというこれだけの戦費をどうやって調達したか。

何せ、高度成長期日本と違って輸入超過の当時の日本には外貨の積み立てはないし、国内の預金残高をすべてあわせても7億円台の時代。兵器、弾薬の類の多くを輸入に頼る状態では、とにかくどこかからお金を持ってこなければ戦争にならない。



もちろん、この本でも書かれているように、アメリカの大金融家、ユダヤ人のヤコブ・シフ氏がユダヤ人迫害を行うロシア帝国への意趣返し的に投資してくれた、みたいな「もっともらしい」話はあるけど、

当時の日本の国家予算よりも大きい戦費を賄うのに、そんな、義侠心みたいな話だけでどうこうしたという説明もうさんくさい。確かに、彼の財産は、当時の大日本帝国なんかよりも財力がある状態ではあったみたいだけど、

だからといって、何の計算もなく「誰もが負けると思っていた」戦争相手に肩入れしたら、戦後にロシア帝国内のユダヤ人がさらに報復を受けかねないし、その理由だけだとしたら、大金融家(当時、全米第2位の金融グループのトップ)にしては儲けを度外視しすぎているような・・・

そのあたりを、

戦費調達のために外債を発行する任務を帯びて英国や米国に滞在した高橋是清と深井英五のコンビによる、債権発行条件の交渉の進捗状況の記録、

戦争の経過とともに変わっていく、当時の債権市場における日本債権やロシア債権の利率を記したチャート表、

資金調達に手を貸した人物、国家、手を貸さなかった人物、国家と、その後の変化、


最後に、借りた金をどうやって返すか、に関する関係者諸氏の思惑の違いに基づくスキャンダルまで、

資料を積み上げて書かれた労作です。

Porco Rosso Financial Weblog(著者のブログ)


最終的に発行されたのは、戦時中の8200万ポンドと、戦後の整理債権4800万ポンド(日本円で12億7000万円相当−1903年の日本の国家予算が2.6億円だった時代−)、

借りる目的は「戦争」(つまり、このお金で何らの生産的な価値は生まれない)、

アジアの大半は植民地で、白人から黄色人種への人種差別は「ふつうのこと」の時代、

日本にお金を出すのがギャンブルでなく、投資になったのには、どのような背景や思惑や人間関係があったのか。想像するだけでも難事業ぶりに鬱になりそうです。


結局は、緒戦の陸海戦をあまり準備のできていないロシア側がとっとと捨てる(ロシアの戦争戦略って、ナポレオンのときも、ナチスのときもそうだったけど、この時も、「懐深く誘い込んで、補給線の延びきった相手を叩く」だったのでしょう)ことで、

日本何気に勝つかも、という期待を生み出して、戦争の継続を可能にした、という話を読んでいると、

本当に日露戦争って、勝てる要素が無いのに勝ってしまった戦争なんだなぁ、と。


帝政ロシアはもう末期で、国内情勢が不穏(そこを日本陸軍が利用して明石大佐の工作があるわけだけど)、

もしロシアが緒戦をちゃんと戦っていれば、日本にお金がなくなって戦争が続けられなかった、という認識がロシア軍側になかった(単純にロシア側指揮官が、辺境のアジア戦線で戦死するようなことになりたくないので、真面目に戦っていないとみることもできそうだけど)、

といった感じで、帝政ロシアがオウンゴール連発で自滅しただけの戦争なのに、「日本があれだけの苦しい生活と想い、犠牲の上に勝った」みたいに日本側(特にマスコミ・民衆レベル)が総括、信じ込んでしまったのが、

次の日中戦争、太平洋戦争での敗北につながっていく原因になっているなぁ、という気がひしひしとします。



国と国の間の利害をよく読んで、敵の敵を味方にするなどの外交戦略、

相手の国の情勢をよく研究し、強みと弱みをちゃんと見て、弱いところを突く戦略、戦術、謀略などをとる、

最新鋭の兵器や戦術を取り入れる、

そして、戦争継続のためのお金を自国で準備できないのなら、それが調達できるように準備する金融戦略もしくは、(市場開放などの貿易の利を見せるといった)経済戦略、

といった、戦争に勝つために考えるべきことを、

セオリー通りにやって、それでも「運よく」勝った程度なのに、

何で、次の世代は、「日本は何をやっても勝てる」になってしまったのだか。あまりに無茶な前提をひっくり返した成功体験が強烈すぎたってことなのだろうか。


もう一つ、「将来、日本の借金を外国からしなければならなくなる(今の日本国債は多く日本の国内で消化されているので、日本人の貯金が全部紙切れになれば日本の借金はチャラになる、という意味で、諸外国に迷惑がかかる度合が比較的小さい構造になっている)」ときに備えて、

「外国からお金を借りてくることの大変さ」を思い出すのに、いい題材という考え方もありそう。

日本の老人福祉を維持するために外国からお金を借りてこれるか、今のギリシャやスペインを見ていれば、答えは分かりそうなものだが、どうなるんだろう。





テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
本「日露戦争、資金調達の戦い: 高橋是清と欧米バンカーたち」 いーわん情報源 たまには日記/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる