日韓の国宝が一堂に会する「ほほえみの御仏―二つの半跏思惟像―」

半跏思惟(はんかしゆい)-右足を左足のうえに乗せるように足を組み、右手を右ほほにあてて物思いにふける形-の像であることは共通するものの、見た目も中身もかなり違う日韓の国宝が、同じ部屋に向かい合って展示される、というこれこそ「見逃したら二度と観られない」展覧会。先日の若冲展があんなことになっていたので、かなり覚悟していたのですが・・・

日韓国交正常化50周年記念 特別展「ほほえみの御仏―二つの半跏思惟像―」

特別展「ほほえみの御仏―二つの半跏思惟像―」公式ページ

「ほほえみの御仏」(弐代目・青い日記帳)


たった一つの展示室に、韓国国宝78号 半跏思惟像(韓国国立中央博物館蔵)と、日本国宝 半跏思惟像(奈良・中宮寺門跡蔵)の2つだけの展示、というのは、今までの阿修羅像とか受胎告知とか、いくつも先例があって、どれも大混雑していたし、今回の会期はわずか3週間。始まったら直ぐに駆けつけなくては、と思っていたら、混雑情報とかの提供もないし、何か変。


いつも様々に訓えをいただいている久米信行さんが、最初の土曜日に出かけて、会場の様子を教えてくださったので、この情報を基に、26日(日)の夕方に出向くことに。

博物館に到着したのは17時40分すぎ。この日の半跏思惟像以外の展示は全て18時までなので、入館時間を既に終えているのがポイント。ガラガラのチケット売り場と「所持品検査」と「金属探知機ゲートをくぐる」という厳重な検査の待つ入口を突破して敷地内に入ると、ギリシャ展の帰りの方が歩いている程度・・・ガラガラでした!

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入口から大きな会場内に入って、仏像が並ぶ右に向き直ると、右に韓国の像、左に日本の像があって、お互いが向かい合わせになっています。とはいえ、お互いに若干うつむき加減に思索にふけっているわけなので、視線が交錯するような感じではないですが。

18時少し前の会場内には30人弱ほど。韓国側が10人くらいで日本側が20人くらい。18時過ぎに他の展示室から来た人たちで少し増え、その後は減っていく感じ。私が19時15分に出ていくときに、会場内の人数は10人程度まで減ったのですが、韓国側が2,3人で他は日本側と、いつになっても1:2の人数比で両像が囲まれていました。何でだったんだろう。


どうせ、仏像の造形を見て、その技術や歴史を見分けられる知識がない私は、単純に「参拝」に来ているようなもの。実質的に誰もいないに等しいのなら、思う存分拝観させてもらえばいい。拝礼と念仏はするものの、基本的に私は、あらゆる角度から拝見して、どんな風に見えるかを堪能させていただくだけ、ということで

両像を15分ずつかけて1周し、後は両者を行き来して違いとかを見てました。さすがにやり過ぎです。空いてたのでついテンションが・・・

で、前日にFacebook(上記)で久米さんのお薦めの角度というのが最初から教えられていて、

中宮寺の菩薩さまなら、向かって右50度ぐらい、右の眼が見えるか見えないかぐらいかの角度で、やや下から見上げて拝む形(チラシ見開きアップの写真より、もう少し右下から見ます)

韓国国立中央博物館の菩薩さまなら、向かって左30度ぐらい、正座して見上げて仰ぎ見る形(チラシ見開きアップの写真より、やや右でかなり下から見ます)



私も、「仏像は下から仰ぎ見ることが前提なので、真正面とかの立ち位置からではなく、中腰以下の低い角度から見上げないと真価は分からないのでは」派なので、これは納得できる角度。


で、韓国のものは金属製で、日本のものは木造漆塗り。大きさは日本の方が3割増しくらいで大きく、柔らかな丸みがあって、韓国の方は、かなりの細身ですらっとした感じをしています。

私の印象は、

韓国側が全般に優しい雰囲気で、
真正面に正座して見上げると微笑んでいるように見え、左から(つまり手が添えられている側越しに)見ると考えているように見える。
瞑想しているよりも「無」と化して動いていない印象が少しする。
座られている椅子?の造形(特に裏から見たときの造りこみが)が日本のものより立派。

個人的にベストな角度は、ケースの左手前隅から、床タイル2枚分前方の床に正座して見上げる角度(久米さんの角度よりちょっとだけ左下)。向こうに見下ろされている感覚がするので、「で、君はどうするのだ」という問いかけを受けているような気になります。


日本側は、かなり丸みを帯びていて柔らかい見た目に関わらず、不思議と力強いイメージが。
こちらの方が「考えている」雰囲気が強く感じられるが、私自身が正面に立った時には「眠っている」印象を受けたので、こちらは瞑想を行っている雰囲気。
こちらの像について「微笑んでいる」という感想を述べる方が多いが、個人的な印象は「泣いている」。特に右下から見上げたときにはそんな印象を受けた。反対に、左手に移って、頬に添えた右手越しに尊顔を拝すると少しだけ笑っているような・・・かなり複雑な表情です。

実は、こちらの像はどこから見ても「向こうに見られている」感覚がしなかった。それが「仏様自身が思索に没入している」印象になっているのかも。



韓国のものは、当時の朝鮮半島の三国分裂という戦争の時代を背景にした来世救済の弥勒菩薩信仰を下敷きにして救済を願われた像で、

日本のものは、仏教伝来初期の守護者聖徳太子に由来する中宮寺で、母の穴穂部間人(あなほべのはしひと)皇后のお姿を刻まれたと伝わる像で、後に太子信仰に結び付いていったらしい。

両者には100年ほどの制作年代の差があるが、仏教美術史全体ではかなり近い地理・時間軸に存在しているのに、かなり差が大きいのが面白いところです。



でも、他の展示が見られない時間帯に行ったことで少々残念だったのは、

法隆寺宝物館の第2室へも行くことができれば、トーハク所蔵の金銅製の半跏思惟像(つまり韓国のものと同じタイプ)が同時に見比べられること。ここにはいくつかあって、日韓の100年の間を埋める時期の作品が揃っているのだそう。もう少し早い時間に行ってそれも見ればよかった。

あと、トーハクに18時以降に行ってもこの仏像しか観られない、と思いきや、

熊本城復興支援 特別上演 VR作品『熊本城』
http://www.toppan-vr.jp/mt/

というのが会期中上映されていたので、少し時間調整すれば、そちらも見ることが出来たこと。

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上演期間:2016年6月22日(水)~7月10日(日)
※月曜日、火曜日、7月1日(金)は休演上演時間:17:00~、18:00~、19:00~
※所要時間 約20分、各回定員 90名
会場:東洋館地下一階 TNM & TOPPAN ミュージアムシアター
鑑賞料金:一律 500円


さらに、半跏思惟像展と奥で開催中のギリシャ展はチケットの相互割引があるので、今から行く方は、事前計画を十分にどうぞ。

最後に個人的なアドバイス。トーハクは長い傘の持ち込みNGだけど、今回のこの展示室に杖は持ちこめた。立ったり座ったりするにあたって杖にすがったり(周囲に座っている人の存在を見えやすくする効果も)、座っている最中に杖にすがることで足の負担を軽くしたりできて便利だったので、もし、足腰弱ったなぁ、と思う人がいたらやってみてはいかが。あと、パンフレットは300円のものと1,000円のものがあるので、お好みでどうぞ。


日韓国交正常化50周年記念 特別展「ほほえみの御仏―二つの半跏思惟像―」
http://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1792

会期:2016年6月21日(火) ~ 2016年7月10日(日)
会場:東京国立博物館 本館特別5室(上野公園)
開館時間:9:30~20:00(入館は閉館の30分前まで。ただし、6月21日(火)は17:00まで)

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この記事へのコメント

か わ か み
2016年06月30日 22:24
同じ日の16時前に観に行ってました。ニアミスでした。
2016年07月10日 20:52
それはまた近かったですね~今日で最終日でしたがその後も極端な混雑にはならなかったのでしょうかね。

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