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zoom RSS 本:吉村昭「関東大震災」

<<   作成日時 : 2015/09/01 22:02   >>

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1923年9月1日午前11時58分、相模湾を震源とするM7.9の地震が発生、東京と神奈川を中心に10万5千の死者を出す大惨事が発生。この本はその顛末を描いた小説です。

最近は、「震災の記念日・慰霊の日」と言えば、311か117かという感じで901もすっかり遠くなりましたけど、直下型で倒壊家屋による被害が多かった阪神・淡路と、圧倒的な津波被害の恐ろしさを示す東日本大震災との対比で言えば、避難行動と火災が被害を大きくした関東大震災は、災害の様々なパターンを学ぶために今後も重視しておかないといけないのかもしれません。


政府公式の報告書は、

関東大震災(災害教訓の継承に関する専門調査会報告書)−中央防災会議 の3部作にまとめられ、

震災被害

政府組織の対応、流言飛語

復興状況


火災消失の状況などを示す地図に、撮影された写真を組み合わせている

関東大震災 写真と地図のデータベース(神奈川大学)

といった歴史資料がありますが、やはり「地震に出遭った人の感じる恐怖」を描写するとなると小説に限ります。


関東大震災での出来事と言えば、上の報告書にある通り、

○本来の地震被害である、烈震とその後の火災による被害。避難所が火にまかれて100人単位の死者が出た場所が2桁存在し、その中でもたった1か所で全犠牲者の半分近い焼死者が出た本所被服廠跡地での出来事。

○地震の後の流言飛語、治安の悪化により発生する人心の乱れと殺戮

の2つの恐怖があり、この小説も事実上その2部構成に。


小説と言っても別に主人公とかがいるわけでもなく、体験者の手記や様々な報告書などの資料を小説形式にまとめ直したものであり、

近代建築が初めて遭遇する大地震の揺れ、
浅草や本所で生き残った人の話、
吉原の遊郭の惨状、
横浜の大火災、
朝鮮人殺害事件に繋がる様々な出来事が流言に変わって、それが伝播していく動き、
軍による「治安維持」を名目にした殺人事件である甘粕事件と亀戸事件、

などが、様々な証言によりその場にいるように描写されている、ということで、
読んでいるとどんどん「この状況に自分が居て生き残れる気がしない」気分になってきます。


江戸幕府治世下の近隣扶助組織みたいなものは、明治の発展に伴う人口の急増の中で消え去り、
西洋式の消防の近代性への過信により「江戸の火消」の伝統が失われ、
産業革命の成果である、燃料や化学薬品の存在が新たな火元として危険視されるが緊迫した危険でもないため対策は後回し、

木ではなくレンガの建物が増えてきたから大丈夫、水道が整備されたんだから火災なんかすぐ消せる、というある種の慢心が、地震への備えが江戸時代よりも退化している状況を生み、

災害後は完全な無政府状態になり、どこからも何の情報も支援もない中、生き残るために商店を襲って略奪を行う(日本人グループ)者や犠牲者から指輪や金歯を奪い去る盗賊の存在が、自分たちと異なる者(朝鮮人や中国人、訛りのある地方の人や聾唖者)への敵視に繋がり、暴徒と化す自警団、

国を憂うがための行動、として行われる殺人、

本来安全な場所である地方の人々は、噂を特に裏取りもせずに拡散し、被災地の見物に出かけようとし…と混乱が続き、「よくもまぁ復興したなぁ」と言う気にさせられます。


それから80年が経って、地震災害は当時より少しはメカニズムも分かるようになってきたし、火災を防ぐ備えも対策も多少は良くなったが、

地震学者の発言を「煽り」にしてしまうマスコミ、それに乗って動揺する人々、それへの防御として「黙って」しまう学者
様々な言説が次々に流れてくるのに一つ一つ騒いでしまう人々、

あたりは別に今でも、将来でも起きるよね、と思ってしまうのが最大の恐怖でしょうかね。多少極端に振れているだけで、「日本人の行動様式」にはこういうのもある、というのが描写されているんだな、という一冊です。



関東大震災 (文春文庫)
文藝春秋
吉村 昭

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