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zoom RSS 本「富士覚醒」

<<   作成日時 : 2011/08/09 22:55   >>

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東日本大震災が起きてこの方、東海地震が近いとか富士山はどうなるとか「東京壊滅!」みたいな煽りが出てくるけど、実際にどうなるのかを科学的にシミュレーションしたものというのはなかなか読むことができません。この本はその貴重な一冊という感じ。

この方のデビュー作で、最悪の火山噴火は地震の比ではないことを思い知らせてくれる

本「死都日本」(2009/05/10)

で、かなりの恐怖を味わわせてくれたわけですが、残念ながら第二作の東海地震ものは主人公一家に起きる出来事に関する後味が悪すぎて、個人的には評価できず。東海・南海連動地震に伴う「想定以上の津波」とか、「地震に基づく原子力発電所の危機」が2004年時点で小説の題材になっている段階で、実際の責任者たちよりも作者の先見性の方が高いと思いますが、一体、本物の当事者たちはどんな世界に生きていたのやら・・・

という愚痴はおいておいて、

第三作目では、再び火山噴火に回帰。作品中に「九州の噴火ものでは東京人に一時目新しく扱われるだけ」と週刊誌記者の言葉として出してくるとおり、火山噴火を読者の身近に感じさせるためには「日本人の誰にとっても身近な活火山」=富士山を題材にするしかない、ということなのでしょう。

これに、従来の神話解釈の定説と異なる「様々な神様が実は火山神である」という講釈であるとか、徐福伝説とかが絡んで、さらに富士山が噴火する、という石黒ワールドが展開します。


今回の文庫版、単行本で「昼は雲の柱」というタイトルだった小説の加筆修正版らしいのですが、趣きはある(出典は旧約聖書)ものの微妙に抽象的な原題(内容的にはこちらの方がふさわしい感じではある)よりは、今回のタイトルの方が目を引くのは間違いなく、今の時期には、「富士山噴火に関する大災害小説もの」という売り出し方だと分かりやすいという営業上の問題が絡んだのかなぁ・・・


ネタバレになりますから、粗筋は避けますが、実は600ページもあるこの本、300ページ目まで読んでも「富士山は爆発しません」。だんだんと「ヤバそう」な前兆は見られるものの、どちらかというと「考古学」とか「神話学」っぽい話に終始。噴火が始まると、一気に最後まで突っ走るというスロースタートな物語。

何でも、富士山は霧島などとは違い「山体を吹き飛ばすような大噴火」は無理で、その意味では、噴火だけで日本を壊滅させるようなことは出来ない。噴火そのものに関しては、富士山で起きうる最悪のシナリオの一つ(静岡大の小山教授による解説より)を使っているので、

富士山噴火ハザードマップの小説版、と思うのがよさそう。当然、現状のハザードマップを超える災害になるわけですけどね。


この作者の本を読んでいていつも思うのは、

日本列島は、地震と火山の地変が集まる地域。その地面の上で、災害発生を過小評価して開発にいそしむのは間違っている。

政府は政府、企業は企業、研究者は研究者、住民は住民で、「災害を小さくする」という目的に沿って自分たちの役割を自分たちで考えて全うするようにしないと被害は抑えられない。「誰かが何とかしてくれる」、「しかるべき筋からの指示がないからやらない、する必要はない」ではダメ。生き残りたいなら、自分の住んでいる場所がどういうところなのかよく知るべきだ。

過去に何が起きたかを知れば、将来の被害を知ることができる。あらかじめ、それを織り込んだ国土開発なり、インフラ整備などの産業政策、生活設計をすれば、いつか多くの国民を喪って嘆く事態を小さくできる。

といった、今の国のあり方に対する怒り。今回は利益誘導のために危機を過小評価する御用学者まで描かれました。残念ながら戦前からそのまま受け継がれている、「国民の安全」が最優先でない国家体制は、本当にこういう事態が「東京に」発生して国民が代償を払う日まで精算されないのでしょうかね。


正直、神話関係の記述に関しては、私の知識が浅いので何ともいえないのだけど、なかなか斬新な解説で面白いです。

いつか、twitterで、

ディザスターものは、ひたすら状況に揺さ振られまくる倒錯めいた快感と、最後の最後に自分で自分の運命を左右できるチャンスに巡り会うカタルシスがオレは好きなんだが…。

という発言をしていた人がいたのを読んだことがありますが、この本はそういう要素は少ないかな(そんな人には「死都日本」の方がお勧め)。


知識では知っているけど、何が起きるのか想像できない富士山の噴火というイベントを体験してみたい人にお勧め。

ところで、東駿河大学が架空の組織なのはすぐに分かるけど、冨智神社というのには何かモデルがあるのかと思ってた。地図上は同じ場所に別の神社が存在するけど、やはりフチ大神を祀る神社という段階でフィクションになってしまうのかな。



富士覚醒 (講談社文庫)
講談社
2011-05-13
石黒 耀

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