いーわん情報源 たまには日記

アクセスカウンタ

zoom RSS 本「死都日本」

<<   作成日時 : 2009/05/10 21:58   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 1 / コメント 0

小説のバランスもそうだけど、タイトルも内容と繋がらないのでイマイチな感じ。でも、火山噴火の描写だけはとんでもなく臨場感がありますね。なので、最後まで一気に読ませる力があります。


例によって、本屋を散歩していた私が、文庫コーナーに平積みされていたこの本の、あまりに不気味なタイトルに惹かれて手にとり、裏表紙の帯に書かれた「『日本沈没』以来の国民的大災害小説」という言葉に、迷わずそのままレジに持っていった、という代物。

発生する「危機」は火山噴火なので、「日本沈没」よりは地変のレベルは小さい...ということは全然なかったですね。まさに「火山こそ発生する被害は天井知らず」、この小説のラスト以降には、間違いなく火山灰によるミニ氷河期到来で世界的な危機が発生しているはず。綺麗に日本だけ沈めて、世界には(日本の経済力消失と難民以外)何の被害も出さなかった「日本沈没」よりも恐ろしい状況です。

何せ、発生する噴火は、火山爆発指数(Volcano Explosivity Index:略してVEI)にして7という超弩級(6クラスで過去にいくつもの国が滅びたと作中で説明)の爆発。全方位に発生した火砕流で、南九州はわずか2時間でほぼ全滅(犠牲者200万超)、大量の火山灰が日本列島を覆い、電波通信が途絶するとともに沖縄と北海道を除く全国各地で土砂崩れが発生し始め、火山噴火によって海溝プレートにひずみが生じて東海・南海地震の前兆現象は起きるは、世界中に撒き散らされた火山灰で世界の寒冷化による食糧危機が懸念される、とそこまでするか?という危機の連鎖。生きている間に実体験したくはないですね。


で、現在の霧島連山の真下にある、山の全てが吹き飛ぶという30万年前の大爆発の結果、カルデラのみになったという加久藤火山が、実は生きていて再び大噴火。当然のことながら、その上に存在していた霧島の山々は全て吹き飛び、その噴煙から生じた超巨大火砕流は、鹿児島市や宮崎市すらもはるかな地下の遺跡にしてしまう(ましてや、火砕流の通り道になった地域をや)という大被害をもたらすのですが、その中で、噴火、火砕流、ラハール(火山灰による土石流)と立て続けに襲い掛かってくる災厄から生き延びをはかって逃避行を続ける火山マニアの防災学者の冒険譚をメインに。

その防災学者もメンバーの一人になっている霧島火山噴火災害対策委員会(と裏組織のK作戦チーム 首班は総理大臣)による、日本生き残りをかけた政治・経済的やりとりをサブにして話が進められます。


こういう話は私には鬼門です。もうとにかく、読んでいて世界観が私の中に完成する頃には、私自身がお話の中に取り込まれているので、早く読み終わらないと、噴火で死屍累々の世界を彷徨したまま現実に帰ってこれなくなります。

で、加久藤火山に本当にそういった破局的噴火をする可能性があるかはともかく、

噴火開始以後の現象記述は詳細をきわめ,最新の火山学的知識がちりばめられたリアリティーあふれるものになっています.火砕流にともなうブラスト,サージ,二次爆発,ラハール,灰神楽など,ありとあらゆる現象のバーチャル体験ができ
静岡大学 小山教授によるBBSへの投稿ログ

という迫真の噴火描写がなんとも、悪夢になりそうなくらい怖い本です。ただ、小説としては、その火山の迫真の描写に比べ、人間と国家の描写に関してはかなり甘く、お話のバランスがかなり崩れているうえに、話も端折られている感があるな、と思っていたら、元々、原稿用紙にして1,600枚もの大作だったのが、半分まで削られることで出版にこぎつけたとのことで、様々な途中経過がすっ飛ばされているらしい。上記BBSへの著者本人の投稿で、どんな部分が削られたか、の言及があるのですが、出来れば完全版で読んでみたかったですね...


リスク管理屋的には、東海地震と連動する南海地震までは想定してみることができるけど、火山の噴火、とりわけ破局的噴火はさすがに上手く想像力が働かないところがあった(有珠山や普賢岳、浅間や桜島の噴煙クラスしか最近は見ていないですし)ので、「最悪これくらいの破壊が出来るんだ」ということを体験できた点でこの本は読む価値があったなぁ、というところ。


日本沈没でも描かれていたのですが、日本列島というのは本当に天変地異が絶えない地域で、その上に住む人たちは、そうしたことを踏まえて生きていける仕組みと生活を考えないといけないはずなのに、地学的にはごく一瞬の静かな状況にあたっているために、滅多に起きない=発生しないという意識で、地下街を作り高層ビルを林立させ、山間部や低地帯などにどんどん進出していく...いったん事あらば、そこは阿鼻叫喚の巷になる場所なのに、ということに一瞬でも思いをめぐらせるには丁度いい小説かも。

クライマックスで、それまでの日本が公共事業で国民の命を守る方向でお金を遣ってこなかったことを愚痴っていた首相が言う「よし、くよくよしていても仕方がない。これは、この国土に日本という国家が存続して良いかを決める審判なんだ。」に、

やはり日本沈没の最終幕で出てくる「外の世界の荒波を、もう帰る島もなしに、わたっていかねばならん…。いわばこれは、日本民族が、否応なしにおとなにならなければならないチャンスかもしれん…」がダブって聞こえてきました。

自分たちがほぼ無条件に信じて疑わない「明日は、昨日や今日と同じように必ず巡ってくる」は、大地の下によって否定されることがあり得る場所に自分たちはいる、ということを考えて生きるのは大変ですけど、日本は本来こういう場所で、我々はその中で前向きに何かを見出しながらやっていくしかない、ということなのでしょうね。

おかげさまで今日も無事、ありがとうございます。


ちなみに、この本でシンポジウムが出来るほど、火山噴火描写に対する専門家の評価は高いようです。(上記の小山教授の投稿によると、噴火のスピードが早すぎるのが難点らしいですが)

「死都日本」シンポジウム―破局噴火のリスクと日本社会― 講演要旨集


あと、↓このブログの一番下に、舞台を巡った読者による写真レポートのサイトや上記のBBSなど、関連リンクが紹介されていて有用です。リンクを巡るとネタばれにもなるので読後にでもどうぞ。

「死都日本」 石黒耀(ひむかブログ)


死都日本 (講談社文庫)
講談社
石黒 耀


Amazonアソシエイト by ウェブリブログ




テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(1件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
本「富士覚醒」
東日本大震災が起きてこの方、東海地震が近いとか富士山はどうなるとか「東京壊滅!」みたいな煽りが出てくるけど、実際にどうなるのかを科学的にシミュレーションしたものというのはなかなか読むことができません。この本はその貴重な一冊という感じ。 ...続きを見る
いーわん情報源 たまには日記
2011/08/09 22:56

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
本「死都日本」 いーわん情報源 たまには日記/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる