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zoom RSS 本「日本沈没第二部」

<<   作成日時 : 2007/01/12 23:53   >>

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私が小松左京氏の「日本沈没」を読んだのは、中学3年くらいの頃だったかと。物語の終盤で政界のフィクサー渡老人が、国土を失った日本人が「大人民族」になるかはこれから次第、と言っていた意味は分からなかったものの、日本の国土を滅亡させる地球のダイナミズムに引き込まれるように読んでいた記憶があります。

それから20年以上の時を経て、やっと第二部を読むことができました。何せ、「日本を沈没させるまでに筆が走りすぎて、流浪の民となった日本民族の話については続編に続く」と言われたままずっと放置され、小松左京氏最後の大作「虚無回廊」とともにこのまま未完の作品になるのではと思われていたのですが...もはや著作の体力を失ったらしい本人に代わり次世代のSF作家たちが引き継ぐという形で、曲がりなりにも本人の構想した作品が完成してくれたことは、ずっと待っていた読者としては嬉しい話です。個人的には、「完結していないお話」は論評できない主義なので。
(以下ネタバレあり)





第一部の「日本脱出計画(D計画)」の後半の中心人物だった中田博士、公安関係担当だった山崎、潜水艇技師で(多分人間の中では)主人公だった小野寺と、その婚約者で富士山噴火時に死んだと思われていた阿部玲子が、第二部の物語に絡む形で登場しますが、日本沈没から25年を経て、「国土を持たない難民国家日本」の中田首相が、日本民族の希薄化を憂慮して民族の再編に乗り出すとはなかなか意外な展開でした。ちょっとノーブレスオブリージュな感じの「ニヒリスト」だった中田博士が、どういう経過をたどって、ナショナリストな首相になったんだろう?

それはともかく、2段組で450ページというかなりな大作(読み通すのに7時間ほどかかりました)なのに、内容は結構詰め込み気味なので、この分量でも「語りつくされていない」感が強いです。

この本が語るべきテーマは、流浪の民「日本人」がなめる辛酸の問題とその解決でしょう。

冒頭に挙げた、国土を失った日本人が、他の民族と渡り合う中で「大人民族」になるかどうかというテーマ。難民は僻地に追いやられ、入植地で迫害され、虐殺されるケースも出る。犯罪集団になったり、抵抗するために反政府ゲリラになる日本難民もいる。一方で実直に入植地をよくし、生き延びる努力が行われる地域もあり、それに対して「日本政府」が行う支援というのも出てくる。

この段階で、「日本人はどこかに再度集結して国家を作ることになるのか」と「世界各地で現地化した日本人として生きていくことができるか」という二つの問題が発生し、前者の問題に対しては「どこに、どうやって」という問題が付随し、後者の問題には、「現地化と日本人であり続けることの共存」という問題がくっついてくる。


個人的にこの続編では、逆境を経て日本人が選択すべきはどちらかに関しての議論をもうちょっと濃密に行うべきだし、小松左京氏なら、両者の立脚点や主張ポイントにもうちょっとページを割いてくれそうな気がするけど、実際にその部分を深堀りすると、平井和正の幻魔大戦のように小説としては破綻する可能性が出てくるので、諦めて最終的な日本人の選択に至るその部分を駆け足で流したのかなぁ、という気がします。とは言え、さすがに2人の政治家の政策論争レベルまで下げてしまった今回の描写にはかなりガッカリなんですけど。

それに、元日本に現れた岩礁をめぐる日米中の地政学的対決とか、日本国土を消滅させた後に残った影響がもたらす地球の異常、もちろん、異変を生き残った日本人が脱出先で生き延びるための努力の経緯などまでひっくるめて全部語ろうとするから、450ページじゃ、全然足りない!という感想になるわけです。

結果、小野寺と阿部の再会などは、エピローグのどうでもいいエピソード程度にさらっと流されて拍子抜けするほどだし、設定年齢で60歳超えているはずでは、の山崎がほとんど潜入スパイのような役回りで大丈夫?とツッコミを入れたくなるし、伏線になりきらずに投げられた枝葉のエピソードがいくつもあるような印象。
ついでに言えば、スーパーコンピュータを開発し、自衛艦隊や海上構築物を国有で保持する「日本政府」のリアリティ(歳入とか政府組織に関する多少の記述はあるものの)がイマイチ分からず、統治権の対象を持たない「政府」が、世界中の難民を統合できている事実を最後まで理解できませんでした。たぶん、日本を脱出した元「日本企業」がいろいろと動いて「難民日本政府」を支えている部分もあるのではないかと思うけど、その辺は全く語られないし。インターネットでバーチャルな「日本政府」というサイトがあるくらいの方が納得できた気もしないではないですが、外交や政治のpowerについての話をするためには、それでは力不足ですしね。


そういう意味では不満もあるけど、不満が語れるのも、物語として一応の完結を見たから。飛ばされた部分は多いと思われるけど、大筋が繋がって世界観が破綻しなければまぁ及第ではないでしょうか。日本が沈没することによって、辛酸をなめるが、それでも日本民族は生き延びて、いつかは宇宙を新天地を求めてさまようまでになる(「果しなき流れの果に」より)、というストーリー構成はなかなかよかったですしね。その時代背景が多分に織り込まれた小説だけに、普遍的な作品として「日本沈没」が後世に残ることは無いだろうけど、世界の中で日本人はどうやって生き延びていくの?という思考実験の一つの証としては見られるのではないかと。

私には相変わらず、どういう風になることが日本人が「大人民族」になることなのか分からないままですけど。
日本沈没 第二部

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